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宙わたる教室

NHKのドラマになって、大評判になりました。「宙わたる教室」の原作です。

舞台は定時制高校の科学部で、年齢も境遇も異なる4人の生徒が謎めいた理科の先生に導かれながら、教室で「火星のクレーター」をつくる実験に挑む。

実験は、火星と同じ重力をつくらなければいけなかったり、土を火星と同じ状態にしなければならなかったり、隕石の衝突の仕方を調整しなければならなかったり、かなり難しい。

作者の伊予原 新さんは元大学の研究者で、これまで研究のかたわら科学をテーマとした小説を多く執筆してきただけに、実験の描写はリアルで、いわゆるSFではなく、科学の実験や、学ぶことの面白さを存分に味わえる。

しかしそれ以上にこの小説の何よりの魅力は、先生と生徒4人それぞれに描き出された人間にある。
子ども時代に学校に通えなかったアンジェラさん、自律神経の障害で不登校になった佳純、中学を出て集団就職した70代の長嶺さん、字が読めない自分をできそこないのポンコツだと思ってグレていたガクくん、教師の藤竹が、偏見や先入観や不条理が見え隠れする中、実験をやり遂げる。そこに、読んでいる私たちが感じる大切なものが潜んでいる。なんでこんなに実験に夢中になってしまったのだろう。

本当はポンコツなんかではなかったガクくんが、科学部のメンバーや悪友とぶつかりながら、科学部の活動にのめり込み、変わっていく様子はぞくぞくしますよ。

さいごは、学会での実験結果の発表が待っています。