
三毛猫といえば白、黒、オレンジの3色模様。しかしその毛色はどのようにして決まるのか?
この疑問の解明に取り組んでいた九州大学高等研究院の佐々木裕之特別主幹教授をはじめとする研究者らのグループが、ついにその遺伝子を突き止めたと発表した。
三毛猫はほとんどがメスで、オレンジと黒の毛色を決める遺伝子のある場所は120年以上前から知られていたものの、具体的な遺伝子は特定されていなかった。約60年前には三毛猫やサビ猫の毛色を決める仕組みが仮説として提唱され受け入れられてきたが、依然としてオレンジ遺伝子の正体や、その働きについては明らかになっていなかった。
研究の結果、オレンジ遺伝子の正体は、X染色体上にある「ARHGAP36」という遺伝子だと判明した。
参考:NHK、九州大学、東京大学、TBS ほか
<少し深掘り>
(どのようにして突き止めたのだろう?)
研究グループは、福岡市内の様々な毛色を持つ18匹の猫のDNAを解析して、オレンジの毛を持つ猫の「ARHGAP36」遺伝子の中に、約5,000塩基の欠失があることを見つけた。さらに50匹以上の猫を調べ、海外のデータも参照したところ、欠失の有無とオレンジの毛の有無が完全に一致していることを突き止めた。さらなる調査で、その欠失の結果、色素の合成の切り替えが起こり、本来黒になる毛がオレンジに変わることが証明された。
この研究は、人の病気の解明にも役立つ可能性があるとのこと。
佐々木教授によると「ARHGAP36」遺伝子は、人では皮膚がんなどの病気に関わるという。毛があまり生えない減毛症や皮膚の基底細胞がんなどが起きることと関係があり、この遺伝子が働く仕組みをもっと詳しく調べれば、人の健康にも役立つ可能性が大いにあるということだ。
「我々の身近にはまだ分からないことがたくさんあるので、そういうことを調べることによって、新しいことが発見できたり、それがすぐには役に立たなくても、まわりまわって科学技術の発展や、我々の病気の克服などに役立つ可能性があるということを感じていただければなと思います」
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グループに参加した研究者はいずれも大の猫好きで、動物病院で診察のために採取された血液を活用するなど、猫を傷つけないよう、細心の注意を払って研究を進めたそうです。